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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
どう考えても、鋳物の仏像が瞬きをする理屈はないのだ。
ところが、明智がそうして仏像の側に身をかがめていた時、突然部屋が真暗になった。電燈が消えたのだ。
と同時に、「アッ」という恐ろしい叫声。人の倒れる物音。
「明智さん、どうかなすったのですか」
三谷の声が、暗の中で甲高く響く。
「早くあかりを。誰かマッチを持っていませんか」
だが、マッチの必要はなかった。丁度その時、お化けみたいな電燈が、パッと部屋を明るくした。
見ると、仏像の前に、明智が倒れている。丁度、先夜小川が殺されていた場所だ。斎藤老人は、その連想から、若しや明智も同じ目に会ったのではないかと、ギョッとした。
三谷が駈寄って、素人探偵を抱き起した。
「お怪我はありませんか」
「イヤ、大丈夫です」
明智は三谷の手を払いのける様にして、元気に立上ったが、顔色は真青だ。
「どうなすったのです。何事が起ったのです」
斎藤老人が、オドオドして尋ねる。
「イヤ、何でもありません。御心配なさることはありません。サア、あちらへ行きましょう」
明智は、何の説明もせず、先に立って部屋を出た。ほかの二人も、こんな不気味な場所に居残る気はなかったので、明智のあとに従った。