轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

二人はボソボソと囁きながら、蝸牛の殻の様に、グルグル曲った、板張りの細道を、奥へ奥へと歩いて行った。

両側には、菊人形の様々の場面が、美しいというよりは、寧ろ不気味な、グロテスクな感じで、並んでいた。そして、むせ返る菊の薫りだ。

文代は、段々男の言葉を信じなくなっていた。恐ろしい疑いが、黒雲の様に、心の中に群がり湧いていた。

併し、彼女は、それだからといって、逃げ出そうとする様な、意気地なしではない。彼女こそ名にし負う怪賊「魔術師」の娘だ。謂わば和製女ヴィドックなのだ。若しこの男が、例の唇のない怪物であったら、予期せぬ手柄が立てられぬものでもない。彼女は寧ろ、この好機会を喜んだ。

謀られたと見せて、却て敵を謀るべき策略が、この時既に彼女の胸中に湧き上っていた。

行く程に、菊人形の舞台は、一つ毎に大がかりになって行った。

丹塗の高欄美々しく、見上げるばかりの五重の塔が聳えている。数十丈の懸崖を落る、人工の滝つ瀬、張りボテの大山脈、薄暗い杉並木、竹藪、大きな池、深い谷底、そこに天然の如く生茂る青葉、薫る菊花、そして、無数の生人形だ。

あの大鉄傘の中を、或は昇り、或は下り、迂余曲折する迷路、ある箇所は、八幡の藪不知みたいな、真暗な木立になって、鏡仕掛けで隠顕する、幽霊まで拵えてある。