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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
突然、三谷は叫んで、写真を裏返しにしてしまった。やっと彼はその写真の怖ろしい意味を、悟ることが出来たのだ。
だが、もう遅かった。
「マア、やっぱり、そうですの?」
倭文子は真青な顔だ。
「そうなのです。……あいつは何という醜悪な怪物だろう?」
写真の中で、むごたらしく斬り殺されているのは、誰でもない、三谷と倭文子であったのだ。
思い出すと、いつか岡田と三人で、町へ散歩に出た時、写真屋を見つけて、三人一緒のや、一人ずつのや、幾枚も写真を撮ったことがある。
その時お互に交換し合った写真に、岡田は巧な加筆をして、無残な死体を作り上げたのだ。洋画家の彼には、そんなことは何でもない仕事である。
流石に、一寸した加筆で、相好がまるで変り、ゾッとする様な死相が現われている。
二人が自分の姿と気附かなかったのも無理ではない。
岡田はどこにいるかと聞くと、一寸東京へといって、荷物などはそのまま残し、急いで出発したということであった。
時計を見れば、さい前岡田が立去ってから、夢の内に二時間程もたっていた。
アア、何という不吉な置土産だ。余りにも念入りなこの悪戯が、何か恐ろしい出来事の前ぶれでなければよいが。