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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
意外な下手人
恒川氏は明智の眼を凝視しながら、考え込んでしまった。明智の言葉が何か恐ろしい秘密を暗示している。それがもう少しで分りそうな気がする。もう少しだ。もう少しだ。
丁度その時、一間置いて隣の、客室のドアが、烈しくノックされたので、小林少年が出て行ったが、すぐ戻って来たのを見ると、手に一通の速達便を持っている。
「誰から?」
「差出人の名前がありません」
少年が変な顔をして、その手紙を明智に渡した。
明智はベッドに仰臥したまま、封を切ったが、二三行読むか読まぬに、サッと驚きの色をうかべた。
意外な下手人
「ごらんなさい。これが、犯人がまだ生きている、何よりの証拠です」
読終わった明智が、その手紙を恒川氏に渡した。
「明智君、病気は如何です。それだから、いわぬことじゃない。僕は二度も警告状を差上げたではありませんか。流石の名探偵も少し手抜かりでしたね。僕が文代さんという絶好の獲物を、見逃がしておくとでも思ったのですか。
ところで、滑稽なことに、僕は死んでしまったのですよ。世間の目の前で死んで見せた。死骸は今でも仮埋葬になって、土の中にあります。
つまり、これは死人からの手紙です。