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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
人夫の一人が、棺の底から、それを拾い上げて、恒川氏に渡した。
「何だか書いてある。手紙の様ですぜ」
棺桶の中に手紙とは、一体全体誰に宛たものであろう。
「明智小五郎君……ヤ、ヤ」警部が頓狂な叫び声を立てた。
「明智さん、これは君の宛名になっていますぜ」
明智が受取って、読んで見ると、その文面は左の様なものであった。
明智小五郎君。
この墓地に気づき、この棺をあばくものは、恐らく君であろう。だが、まことに残念ながら君は少し遅すぎた。もうすべては終ったのだ。この棺の中から、死骸を盗み出した人物は、既に彼の最後の目的を達したのだ。君は、ついにこの棺をあばいた。だが、それが何を意味するか、君は知っているだろうか。
その人物は、ちゃんとプログラムを定めておいたのだ。明智小五郎がこの棺をあばいた時こそ、彼の最期だと。
君は、既に死の宣告を与えられたのだ。如何なる防備も、敵対も、その人物にとっては、全然無力であることを知るがいい。
「またか。僕はやつの脅迫状を受取るのが、これで三度目ですよ。何というお芝居気だ」
明智は、紙片を丸め捨てて、苦笑した。
魔の部屋
いやな墓地発掘の仕事が、一段落をつげると、裁判所の人々はサッサと引上げて行った。