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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

明智が説明を続ける。

「くわしいことは、いずれお話しする機会があるでしょう。今は、お芝居の第三幕目もまだ残っていることですから、ごく簡単に申しますと、つまり、刑務所内の医局の人々と、看守と、二三の病囚人が、ぐるになって畑柳庄蔵を死人にしてしまったのです。彼はやや重態の病人には相違なかった。しかし、まだ死んではいなかったのです。死骸と寸分違わぬ、一種の麻痺状態にあったに過ぎません。南洋の植物から製せられた、クラーレという劇薬を御存じでしょう。恐らくその様な薬品が使用されたのかも知れません。兎も角、畑柳庄蔵は、彼の同類のはからいで、生きながら、無事に刑務所の門を出ることが出来ました。そして、その後、土葬された墓場から、よみがえったのです。よみがえって、彼の盗みためた宝を守護する鬼となったのです」

「小説ではあるまいし、日本の刑務所で、そういうことが行われるとは信じられません」

警部が、たまり兼ねて口をはさんだ。

「畑柳家は大金持です。数人の人々の生涯を保証する位の金銭は、何でもありません。生涯安楽に暮らせる程の大金をさしつけられて、目のくらまぬものがありましょうか。