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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「ワハハハハ、探偵さん。君は気が違ったのか。夢でも見ているのか。これが倭文子と茂でなくて、一体誰だというのだ」
「誰でもない」
「エ、誰でもない?」
「人間でないというのさ」
「エ、エ、人間……」
「蝋人形だよ。君は唇のない仮面を作らせた位だから、蝋細工がどんなに真に迫って出来るものだか、よく知っている筈ではないか。僕はあらかじめ君の計画を察したものだから、二人の蝋人形を作らせて、君の留守の間に、本物と入替えておいたのだ。あの時の妙な呼笛は、僕の部下の小林君が、君をおびき出す為に吹いたのだよ」
いわれて見ると氷詰になった二人は、人間の死骸にしては、あまりに肌の色艶が美しかった。
その上よく見ると、倭文子も茂少年も、顔には一向苦悶の表情が現れていないことも解って来た。谷山も恒川警部も、アッといったまま、明智のあまりの放れ業に、あいた口がふさがらなかった。
「まだ疑わしいと思うなら、本当の倭文子さんと茂少年を引合せて上げてもいい。……文代さんもう入って来てもよろしい」
明智がドアの外へ声をかけると、待ち兼ねていたように、それがあいて、三人の人物が入って来た。同時に陰惨な部屋の中が、パッと明るくなった。