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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
人夫達は、先ず第一に、大小二つの死骸に驚かされた。
「ヤ、死骸だッ」
最初それを見つけた男は、頓狂な叫び声を立てて飛びのいた。
しかし、それは、本当の死骸ではなかった。例の花氷のろう人形なのだ。氷が厚かったために、中のろうがとけ切る暇がなく、形はくずれながらも、裸体人形のおもかげをとどめていた。
死骸でないと分っても、そんな不気味な代物を見た人夫達は、ひどく神経的になっていた。
「オイ、今度は本物だ。人間のお骨だ」
間もなく一人の人夫が叫んだ。
「ヤ、本物だ。本物だ」
今度こそ間違いでないことがわかった。
焼けて灰になった材木の下に、バラバラに砕けた人骨が埋まっていた。そこは、建物の内でも、最も火のはげしかった部分だから、肉も臓腑もとけてしまったとしても、不思議はなかった。
巡査が駆けつけた。
「やっぱり、犯人はここで焼け死んだのだ」
彼は警視庁にこのことを急報した。
しばらくすると、恒川警部が明智小五郎を同伴してやって来た。
「僕の思った通りだ。奴はとうとう自殺したのです」
バラバラの白骨を前にして、警部が感慨をこめていった。
「そうです。彼奴は死んだのかも知れません。