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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
すると、岡田は彫刻もやったものと見える。
「僕達は、死んだ岡田君とは、間接に知り合のものです。やっぱり同じような仕事をしているのですよ」
明智は出鱈目をいった。
家主は暫らく二人の風体をジロジロ眺めていたが、やがて妙なことをいい出した。
「あの家は訳があって、ちっと高くつくのですがね」
「高いといいますと?」
縁起の悪い水死人の住んでいたアトリエ、しかも長く空家のままになっているのに、高いというのは変だ。
「イエね、家賃の方は、高い訳でもありませんが、つきものがあるのです。岡田さんが残して行った、大きな彫刻があるのです。そいつを一緒に引取って頂き度いので」
家主の話を聞くと、このアトリエは元、ある彫刻家の持家であったのを、彼が買受けて貸家にしたので、岡田はその最初から二年ばかりの借り主であったが、非常に孤独な男で、奇妙なことには、身寄りのものも、親身の友達もないらしく、警察から水死の通知を受けても、死骸の引取手もなかったので、さしずめ家主が一切を引受けて、葬式から墓地のことまで心配した。
そんな訳で、岡田がアトリエに残して行った品物は、凡て家主の所有に帰したのだが、その中に、仲々高価な彫刻があるというのである。