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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
「あけてなかったというんですね」帆村の顔はいよいよ青白くなる。
「あなたは、その缶詰をどこで見ましたか」
「その小卓子の上にありました」
「この小卓子の上にね。たしかですね」
帆村の額に青い血管がふくれあがる。
「たしかでございます。あたくしがこの部屋に入って参りましたとき、先生――旗田先生は小卓子の脇を抜けてその皮椅子へ腰をおろそうとなさいましたが、そのときお服がさわりまして、あの缶詰が下にころがり落ちました。あたくしは急いでそれを拾って、この小卓子におのせしました。するとそのとき先生はお愕きになって――下は絨毯ですから、軽い缶詰が落ちても大きな音をたてなかったので、先生はそれにお気づきになっていなかったようでしたわ――それで、あたくしをお睨みになって『余計なことをしてはいかんです』と仰有いました」
「なるほど。それからどうしました」
「それから――それから先生はその缶詰をお持ちになって、あそこの戸棚の引出におしまいになりました。それから元の椅子へおかえりになりました」
「なるほど、なるほど」帆村は昂奮をおさえつけようとして、しきりに瞼をしばたたいている。
「あなたが拾いあげた缶詰はたいへん軽かったというが、どれ位の重さだったんですか」