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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
恐ろしい嫌疑
じゃあ後はお目にかかって……」
受話器をがちゃりとかけて、帆村はノートした紙片を取上げた。彼は突立ったまま、しばらくその紙の上を眺めていた。そこには鉛筆のいたずら書としか見えない三角形や楕円や串にさした団子のような形や、それらをつなぐもつれた針金のような鉛筆の跡が走りまわっていた。それは帆村独特の略記号であった。それが解読できるのは、帆村自身の外には、彼の助手の八雲千鳥だけだった。
彼は、ものに憑かれたように、五分間というものはその紙面に釘づけになっていた。その揚句に、彼はその紙片を机のまん中にそっと置いた。それから彼の手が忙しくポケットをさぐって、紙巻煙草とライターを取出した。ライターをかちりといわせて、焔を煙草の先に近づけた。ふうっと紫煙が横に伸びる。彼はライターの焔を消そうとして、急にそれをやめた。
机上におかれた例の紙片がつまみあげられた。その紙片は灰皿の上へ持って行かれた。その下に、ライターの焔が近づけられた。紙片はぱっと赤い焔と化した。そしてきな臭い匂いを残して黒い灰となり、灰皿の中に寝て、すこしくすぶった。
恐ろしい嫌疑
探偵帆村荘六を、朝っぱらから引張り出した事件というのは、一体どうしたものであったか?