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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
と、亀之介は歯牙にもかけないような顔をしたが、しかし彼の語調に狼狽の響きがあった。「ひどく酔っていたもんで、咽喉がからからなんです。ですから小林に水を貰って呑んだように思います」
「腰紐がぶら下っていることや、なまめかしい長襦袢のことはよく覚えていらっしゃるのに、水を貰って呑んだことは記憶がぼんやりしているのですね」
「それは皮肉ですか、こっちは正直に話をしているのに……」
「いや、あまり気にしないで下さい。そして家政婦が水を大きなコップに入れてくるまで、どこで待っていましたか?」
「二階へ上る階段の下です」
「お待ちになっている間、そこからどこへも動かれなかったんですか、例えば小林の後を追いかけて勝手元へ行ってみるとか、或いは又、小林の部屋へ入ってみるとか、そんなことはなかったですか」
「失敬なことをいい給うな。僕が――この邸の主人の弟が、なんであんな婆さんの後を追うんです。僕は色情狂ではない…………」
「いや、よく分りました。これで伺いたいことはすみました。どうぞお引取り下さい」
亀之介はなおもぷりぷり憤慨して、帆村を睨みつけていたが、やがて火の消えた葉巻煙草をぽんと絨毯の上に叩きつけると、すたすたと部屋を出ていった。