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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
それに、都会人らしく、はにかみ屋で、人なつこく、気が弱そうで、ふと冷酷なところもあり、そしてまた、軽薄に見えるくらい陽気で明るいかと思うと、急に深い憂愁に閉ざされていたり、純情かと思うと、凄い女たらしに見えたり、……時と場合でぐるぐると表情が変り、印象が違うので普通の平凡な男に飽いている女にとっては、ちょっとした魅力のある男であった。
すらりと背も高く、女に対する言葉づかいも、ぶっ切ら棒な調子の中に、嘗めるような丁寧さがあった。いわば女好きのする男なのだ。美男子ではないが、渋いよさがあった。
だから、けっしてダンディ(伊達者)ではなかった。
「……僕はもっさりしてるからね」
半分本気で言っていた。服装もお洒落ではなかった。身のまわりに気を使うには余りに不精者であった。
しかし、信吉は、
「おれは精神的にはダンディだ」
と思っていた。
つまり、ダンディという言葉の意味の違いなのだ。
信吉にとって、ダンディとはボードレエルの言う――
「人を驚かすが、自分は驚かないというのが、ダンディの守るべきおきてだ」
これだった。だから、信吉はつねに、いかなる場合にも、物事に驚くまいと思っていた。