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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

自由を束縛されるのはいやだから。戦争なんかはじまったおかげで、四方八方束縛されてるのにこれ以上結婚で束縛されるのはいやだよ」

「恋愛は……?」

「目下していない。君は……?」

「…………」

「なんだか、していそうだね」

莫迦々々しい質問だと、信吉はわれながらあいそが尽きた。

「するなら、どんな恋愛をしたいの?」

「そうね。プラトニックラヴね」

女って皆そう言うと思った。はかない女の郷愁だろう。

「プラトニックだけで済むかね」

「ベーゼ……? ベーゼなんてくだらないと思うわ。そう思わない……?」

「まア、そうだね」

と、信吉はしぶしぶ相槌を打った。つまらぬ相槌を打ったものだ。これじゃ、飛び掛って、接吻も出来やしない。

話が途切れた。

信吉はじっと冴子の顔を見つめていた。

冴子は壁に掛った絵を見上げて、にやにやしていた。

「どうして、にやついてるの……?」

「どうして……?」

にこっと笑って、眼をパチパチさせた。

「――どうしてだか判らない。何だか笑いたくてたまらないの」

「照れてるんじゃない……?」

「そうよ。あたし、物凄い照れ症なのよ。――こりゃたまらない」

本当に噴き出してしまった。