轻松读懂日语经典作品
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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
信吉は喫茶室を出ると、受付へ行った。そして、伝言用紙を貰うと、
八時に必ずお伺い致します。
四五三号室 須賀信吉
(われわれは軽佻か倦怠かの、どちらか一方に陥ることなくして、その一方をまぬがれることは出来ない)
三三三号室様
そう走り書きすると、
「これ渡して置いてくれませんか」
そして、四階の自分の部屋へ上って、支度をすると、東京劇場へ出掛けた。
都電に乗ると、隣に坐っていた男が、
「やあ、暫らく……」
と、声を掛けた。
四十前後の色の蒼白い男だった。よれよれのレインコートを着ている。
全然見覚えはなかった。
「いいところで会いましたね」
「失礼ですが、あんたは……?」
「あんたは……? あはは……。あんただなんて……」
笑い出した。
「文久三年に品川沖であんたという名前の鯨がとれたことがある。あんたという名前ですよ。あはは……」
笑っていたが、急に真面目な顔になると、
「――どこまで……」
「東京劇場まで……」
「じゃ、あたしと同じだ。ご一緒に参りましょう」
「失礼ですが、どなたですか」
「名前は明かせない……」
「えっ?」
「いや、名前は明かせないと言ってるんですよ」