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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

「…………」

何か言おうとして、言葉を探しかけたがその時、芝居の幕があいたので、舞台の方を見た。そして、

「日本人って議論が好きですね。おせっかいですね。ひとのことなんか、どうだっていいのにね……」

と、ひとりごとのように言いながら、自分の書いた芝居を見物した。

一幕目は全然受けなかった。が、追加された二幕目のラヴシーンは、最近この種のものに客が餓えていたせいか、観客席の反響は、意外なくらいだった。

科白もまずいし、第一、全体の劇の進行とまるで関係のない、この幕が受けているのは、信吉には心外だった筈だ。

ところが、信吉はその反響を感じているうちに、それが自分の知らぬ間に誰かの手で加筆追加された幕だということを、ふと忘れてしまうくらい、だらしなくやに下り、その幕の成功がそのまま自分の成功だと錯覚してしまった。

これは一体何であろう。

ラヴシーンだというせいではなかったろうか。歯の浮くような、甘ったるいラヴシーンで、凡そくだらない一幕だった上に、現代劇だというのに、新内流しの下座がはいっていて、いつもの信吉なら、そのチグハグさに腹を立てるか、噴き出した筈だ。