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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

新しい病気が発見されるほど、新しい行為というものは生み出せない。だから、驚くに当らない」

信吉はちょっと矛盾していた。

彼は異色とか風変りとか型破りというものに、価値を認めていた。しかしこの議論によれば、人間のすることは結局大同小異五十歩百歩の紋切型で、赤、黄、青、紫、黒、白などの原色とその組み合わせがあるだけで、異色などというものはあり得ないということになる。

しかし、議論というものは、つねに誇張された一般論になり易いもので、おまけに何らかの意味で一元論的傾向に陥り易い。複雑を複雑のまま語ることは、議論ではむずかしいのだ。

言葉のむなしさであろう。『人間はどんなことでもする。だから、僕は人間がどんなことをしても驚かない』と、信吉は言ったが、しかし、それは単なる覚悟に過ぎない。覚悟だから、その言葉通りには参らない。

例えば、その舌の根の乾かぬうちに、新内語りの話をきいて、さすがに信吉は舌を巻いて、驚いたのだ。

新内語りは次のように言ったのである。

「ちょっと、あたしにも喋らせて下さい。いや、べつに大した異論があるわけじゃない。何もかもあんたのおっしゃる通りだ。