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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

実際、人間ってやつは、――いや、女といいましょう、女というやつは、どんなことでもする。いちいち驚いていた日には、きりがない。察するところ、あんたは、人間というものは結局こんなものだと、諦めてらっしゃるらしいが、あたしだってご同様女というものは結局あんなものだと、諦めているんですよ。しかし……」

新内語りの声は、ごうごうと皺枯れていたが、熱を帯びて来るにつれて、錆びのあるハリが次第に高まっていた。

「――しかし……」

と、新内語りはつづけた。

「――この諦めに達するまでには、あたしは随分苦しみましたよ。人並みにね。――あんたは、女が亭主のほかに男をこしらえても驚かないと言いましたね。しかし、あんたは奥さんに姦通されたことがありますか」

「人に吹聴するほどは、ありません。しかし嫉妬の感情は判ります」

信吉は正式の結婚はしなかったが、女と同棲した経験はあった。その女は信吉と同棲する前に、何人かの男があった。おまけに、信吉と同棲中、他の男と関係した。信吉は嫉妬で苦しんだ。が、その女は半年ほど前に死んだ。死んでしまうと、女の美しいところばかりが想出として残った。