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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
かたであった。
「六ちゃんだね」半助は低い声で云った、「とらを送って来てくれたんだね」
「とらを送って来てやったよ」
「いつもすまないね」半助はあいそう笑いをした、「ありがとうよ」
だが、二インチほどあけた障子はそのままだし、あがれと云うようすもなかった。
六ちゃんはかぶっている――実在しない――帽子をぬぎ、手の甲で額をこすった。
「まだ信心しているかね」半助がきげんをとるような口ぶりできいた、「毎晩おそっさまに欠かさず信心をやっているかね」
「ああ」六ちゃんは答えた、「毎晩おそっさまに信心してるよ」
半助は溜息をついた、「おっかさんもたいてえじゃないね」
「だいじょうぶさ、心配なんかないよ、おれが付いているからな」
「うん、それはそうだ」
半助は気弱そうにそっと六ちゃんから眼をそらせた。六ちゃんは持っている――空想の――制帽の庇を撫でている、それから半助に問いかけた。
「おじさんの仕事はうまくいっているのかい」
「まあまあだね」
半助は眼で笑った、「うまくいってるっていうほどでもないが、まあそうわるいってこともないね、まあぼちぼちってところだね」
六ちゃんは「ふーん」