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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
口の悪いことではひけをとらない一群のかみさんたちでさえ、かつ子のことをがんもどきと云いながら、かなえに対しては羨望とあこがれの眼を向け、せいぜいのところ女らしい嫉妬を感ずる程度のようであった。
或るとき、社会意識にめざめた有名夫人たちが団体で、ここの住民に古衣類や菓子、粉乳や家庭薬などを、無料配給するためにやって来たことがあった。住民たちにとっては大きなよろこびだったろう、まるで餓えた野獣が獲物にとびかかるように、それらの物資に襲いかかり、すべての物をあっというまもなく奪い去ってしまった。そして、有名夫人たちがあっけにとられていると、――もうねえのか、これっぽっちしか持って来ねえのか、と男たちが喚いた。
こんなけちな物を持って来てえらそうなつらをするな、と他の男がどなり、さっさとけえれ、まごまごするとただじゃ済まねえぞ、と威し、子供たちは石ころを投げつける、という結果になった。
そういうかれらが驕慢そのもののようなかなえには、反感や悪意よりも、むしろ畏敬に似た態度を示すのはなぜだろうか。
――慰問団がやられたのは、住民たちの貧窮に触れたからだな、とヤソの斎田先生は評した。