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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

かつ子はこうして満十五歳になった。そのとしの冬、おたねが婦人科に属する腫瘍を手術するために、三週間ほど病院へはいった。その費用はかなえにまかなってもらったが、同時に「仕送り分は差引きだ」と宣告され、京太は窮地に追い込まれた。

「なあかつ子、ひとつよく考えるんだぞ」京太は酒臭いおくびをしながら云った、「生みの母も及ばない、深い恩のある伯母さんの病気だ、ことによると生死にかかわるかもしれない、そうだろう」

かつ子は黙って内職の仕事を続けていた。

「だから、伯母さんの恩を忘れない証拠にも、ここは精いっぱいはたらくときだ、伯母さんがなにを心配しているか、病院にいてなにをいちばん気に病んでいるか、おまえはよく知っている筈だ」

京太は自分の言葉の意味を、かつ子が理解したかどうか、慥かめるような眼で少女の顔をみつめた。かつ子はなんの表情をもあらわさず、ただ内職仕事の手を早めただけであった。

「おまえがもう少しましなきりょうで、躯つきもおとなびていればいいんだがな」と京太は独り言のようにつぶやいた、「そうすればもっと楽で、みいりのある仕事もあるんだが、おまえじゃしょうがない、まあ内職でもするほかに手はないだろう、その代り伯母さんの分までやるんだぞ、わかったな」