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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

それにしてもこの音の発するメカニズムや、このような発音の生理的の意義やについて知りたいと思う事がいろいろ考えられる。中学校で動物学を教わったけれども、鳥や虫の声については雑誌や書物で読んだけれども、猫のゴロゴロについてはまだ知る機会がついなかったのである。これは何も現代の教育の欠陥ではなくて自分の非常識によるのであろう。デモクラシーを神経衰弱の薬、レニンを毒薬の名と思っていた小学校の先生があったそうであるが、自分のはそれよりいっそうひどいかもしれない。しかしレニンやデモクラシーや猫のゴロゴロのほんとうにわかっている人も存外に少ないのではあるまいか。ともかくもこのゴロゴロは人間などが食欲の満足に対する予想から発する一種の咽喉の雑音などとは本質的にも違ったものらしく思われる。

この音は私にいろいろな音を連想させる。海の中にもぐった時に聞こえる波打ちぎわの砂利の相摩する音や、火山の火口の奥から聞こえて来る釜のたぎるような音なども思い出す。もしや獅子や虎でも同じような音を立てるものだったら、この音はいっそう不思議なものでありそうである。それが聞いてみたいような気もする。