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にじ

彩虹

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页

青空文庫

二

上背のあるりっぱな体躯と、眉の濃い、一文字なりの唇つきの眼立つぬきんでた風貌である。伊兵衛からさえに移した彼の眼は、一瞬きらきらと烈しく光った。

「ほう」

と、彼は唇をつぼにし、無遠慮にさえを見詰めたまま歎賞の声をあげた。

「……美しいな」

「中座をして済まなかった」

伊兵衛はそう云いながら立っていった。

「……なんとも堪らなかったものだから」

「そんなことは構わないが、もういいのか」

おちついたようだと聞いて宗之助は微笑したが、急に身をひらいて、

「では庭へ出よう」

と云った。伊兵衛は相手の眼を見た、宗之助は袴の紐を解き、くるくると裸になった。

「久方ぶりで一揉みやろう」

「どうするのだ」

「相撲だよ」

宗之助は挑むような眼でこちらを見た。

「酒では勝ったが力ではまだ負けるかも知れない、あの頃はどうしても勝てなかったからな、さあ来い」

「酔っていてはけがをする、それはこんどに預かろうじゃないか」

「おれは裸になっているんだ、恥をかかせるのか」

二

このとつぜんの挑戦は単純なものではない、伊兵衛の神経はそれを感じた。そして袴の紐へ手をかけるのを見て、さえが止めにはいろうとしたが、伊兵衛は、「止めるな」