轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かれがころしたか

彼が殺したか

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页

青空文庫

しかし、はたして清三は道子と俺の間を疑っていなかったのだろうか。

否、彼は十分に疑っていたと云っていいのだ。それがこの場で明かにされた。

見よ、突然の俺の出現に対し、道子は之を一笑に附し去ったが、清三はこの出現を何と解釈したか。

彼は蹲っている侵入者には目もくれず、いきなり道子の所に進み、側にすわりながら、

「どうしてここに大寺が来たんだ?」

と呼吸せわしく鋭くつめよったのである。

清三は今や自分が云っている芝居の台詞に自分自身が刺戟されているのだ。「芝居と思っていた其の仕組みは或いは事実ではなかろうか、ほんとうに道子は大寺を愛して居て、此の芝居によって二重にマゾヒズムスを満足させて居るのではないか」之が清三の気持だったにちがいない。否、この時の彼の真剣さは、全くこの事を信じはじめたように見えた。

道子が黙っているのを見て彼は再び云った。

「おい、貴様、ほんとうに大寺とくっついてやがるのか」

若し此の時の清三の裏に切迫した状態を道子がはっきり見てとったなら、あの悲劇は起らなかったかも知れない。

然るに軽率にも道子はその注意を怠った。

彼女はいつもの芝居でやるであろうように、至極手軽にこう答えたのである。