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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
ひょっとしたら、鏡の壁に何か抜け穴でも出来ているのじゃないかと思うくらいです」
怪物の奇怪な消失に、又改めて大捜索が繰返された。人の隠れそうな場所は、悉く打毀し、迷路の竹藪もすっかり倒してしまって、隅から隅まで、何度となく探し廻った。
しかし、遂に黒い怪物は、どこにも姿を現わさなかった。と云って、テントの外へ逃げ出さなかったことは、見張りの六人の警官をはじめ、まわりを囲む群集が、何よりの証人であった。
宗像博士の提案によって、鏡の部屋が取り毀され、大鏡が一枚一枚壁からはずされて行った。しかし、そのあとには、どんな抜け道も、どんな隠れ場所も発見されなかった。
あの不気味な鏡の部屋は、一人を千人にして見せるばかりでなくて、人間を全く影も形もないように吸い取ってしまう魔力を持っていたのであろうか。
人々は、六角の鏡の部屋が、奇術師の魔法の箱のように、そこへ入った人間を、先ず粉々に打ちくだき、その目にも見えぬ破片を、六方から、サーッと吸い取って行く光景を幻想して、ゾーッと肌寒くなる思いをしたのであった。
復讐第三
その執拗残酷な復讐鬼の正体は少しも分らなかった。