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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
復讐第三
不思議なことに、復讐を受けている川手氏自身さえ、全く見当がつかないと云っていた。
ただ分っているのは、そいつが世にも恐ろしい三重渦巻の指紋を持っていることであった。三つの渦巻が三角形に並んで、まるでお化けが笑っているように見える三重渦状紋。悪魔は到るところにその怪指紋を残して行った。殊に復讐行為の直前には、殺人の予告ででもあるかのように、必ず人々の前にそのお化指紋が現われるのであった。
復讐鬼は魔術師のような不思議な手段によって、川手氏の二令嬢を誘拐し、惨殺し、しかもその美しい死体を、衆人の目の前に曝しものとした。妹娘雪子さんは、衛生展覧会の人体模型陳列室に、その生けるが如きむくろを曝す憂き目を見、姉娘の妙子さんは、場所もあろうにお化け大会の残虐場面の生人形と置き換えられ、竹藪に囲まれた一つ家の場面に、胸を血だらけにして倒れていた。
そして、この次は、一家の最後の人、川手氏自身の番であった。復讐鬼の真の目的は、川手氏にあったことは云うまでもない。先ずその二令嬢を惨殺したのは、川手氏を思うさま苦しめ悲しませ、復讐を一層効果的にする為であったことは、復讐鬼の嘗ての脅迫状によっても明かであった。