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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

「近藤さん、これがあなたの分です。ここで着更えをして下さい。あなたは印半纒の職人になるのですよ。僕はその親分の請負師という訳です」

川手氏の分は、古い印半纒に紺の股引、破れたソフト帽子まで揃っている。博士の分は、茶色の古い背広に、廉手なニッカーボッカー、模様入りの長靴下、編上靴、ソフト帽などで、いかさま土方の親分といった服装である。

二人は車の中で、窮屈な思いをしながら、どうやら着更えを済ませた。今まで身につけていた着物や外套は、一つに纒めてスーツ・ケースの中へおし込まれた。

「サア、これでよし。近藤君、これから口の利き方もちっと乱暴になるからね。悪く思っちゃいけないぜ」

親分が云い渡すと、子分の川手氏は、急には答える言葉も見つからぬ様子で、破れソフトの下から、目をパチパチさせるばかりであった。

「もういいから、東京駅へ直行してくれ給え」

博士が境のガラス戸を開けて、運転手に声をかけた。車は忽ち方向を変えて、矢のように走り出す。

やがて、駅に着くと、二人は銘々のスーツ・ケースを下げて、車を降り、遠方へ出稼ぎに行く職人といった体で、構内へ入って行った。