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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

ことにした。

老婆の記憶を呼び起すのに、ひどく手数と時間がかかったけれど、月々の行事などに結びつけて、結局それらの事件の日と竜子の外泊の日とがピッタリ一致していたことを確め得たのである。

中村警部はこれに勢いを得て、更に質問をつづけた。

「で、奥さんの様子に、近頃、何か変ったところはなかったかね。どうして突然引越しをする気になったか、どうもそこの所が少しはっきりしないようだが」

「サア、わたしもそれを不思議に思っているのでございますよ。変った様子といえば、引越しの十日余り前から、奥様は何か深い心配事でもおありの様子で、いつもの奥様とはまるで人が変ったように、ソワソワしていらっしゃいました。

わたしなんかには何もお話しにならないので、事情はちっとも存じませんが、なんでもよっぽどの御心配事のようで、それから間もなく引越しの話が持上ったのでございます」

老婆との問答の、後々に関係のある重要な点は、以上に尽きていた。

老婆の取調べが終った頃、引越しの荷物を運んだ運送屋の若い者が、一人の刑事に連れられて入って来た。そこで又問答が行われたのだが、その結果、北園竜子の大小十三箇の引越し荷物は、運賃前払、東海道三島駅前運送店留置という指図で、昨日の夕方貨車に積み込んだことが判明した。