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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
まぐれ当りではないのだよ。食料品屋の小僧から聞き出したのだ。そして、あの不思議な十箇の罐詰と十斤の食パンの謎を解いたのだ。引越しにそんなものの必要はない。これは君が、数日の間、世間と全く交通を断って、どこかに隠れる積りに違いないと考えた。では、どこに隠れるか。鬼熊のように人里離れた山の中に隠れるか。イヤ、君がそんな間抜けな真似をする筈がない。これまでのやり方でも分っているように、君という人は巧みに人の意表を突く手品使なのだからね。
わしはそういう手品使の気持になって、君の計画を想像して見た。すると、どうも君の突然の引越しそのものが臭いのだ。殊更あの家を空家にして見せたところに、何かカラクリがあり相な気がするのだ。わしはつい数時間前に、やっとそこへ気がついた。そこで、助手を連れて、空家の探検に出かけて来たのだが、そのわしの想像がまんまと的中した。これでわしも、君と同じくらいの智恵を持っているという自信を得た訳だよ。ハハハハハハ」
「イイエ、違います。それはあの家を引越したと見せかけて、屋根裏へ隠れたのは本当ですけれど、それにはどうにも出来ない恐ろしい訳があったのです。