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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

そこには、ただ五文字、

衛生展覧会

と記してあるばかり、さすがの博士も、その意味を解し兼ねたように見えた。

「オオ、いつもの封筒です。いつもの用紙です。犯人からの通信に違いありません」

川手氏が、やっと気附いたように叫んだ。

「犯人の手紙ですって、それじゃこれは……」

「中村君、行って見よう。これからすぐ行って見よう」

博士は何を思ったのか、中村警部の腕を取らんばかりにして、惶しく促すのだ。

「行くって、どこへです」

「極っているじゃないか。衛生展覧会へですよ」

「しかし、衛生展覧会なんて、どこに開かれているんです」

「U公園の科学陳列館さ。僕は、あすこの役員になっているので、それを知っているんだが、今衛生展覧会というのが開かれている筈なんです。サア、すぐに行って見ましょう」

中村係長にも、おぼろげに博士の考えが分って来た。この素人探偵は何という恐ろしいことを考えるのだろうと、殆んどあっけに取られる程であったが、兎も角愚図愚図している場合でないと思ったので、博士と共に、門前に待たせてあった警視庁の自動車に乗り込んで、U公園の科学陳列館へ走らせた。

川手氏は両人の気違いめいた出発を、あっけにとられて眺めていたが、雪子の行方不明と衛生展覧会とを、どう考えても結びつけることが出来ず、しかし、分らなければ分らないだけに、何とも