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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

宗像博士が初めて口を開いた。博士の顔には、何は兎もあれ、事件依頼者の無事を喜ぶ色が浮かんでいた。

「イヤ、まだ健康体とは云えません。僕の家の一間にとじこもったきり、寝たり起きたりという状態です」

「そうですか。何としてもお手柄でした。それを聞いて僕も心が軽くなりましたよ」

博士は他意もなく明智の手柄を称えたが、ふと何事か思い出した様子で、

「アア、話に夢中になっていて、うっかり忘れるところだった。皆さんちょっと失礼します。ある事件依頼人に、電話をかける約束があったのです。じき戻りますから明智君、話の続きは暫らく待っていて下さい」

と慌しく電話室へと立って行った。

「明智さん、そんなに、私立探偵の権能を揮われては困りますね。川手氏を発見しながら、無断で自宅にかくまって置くなんて、事を荒立てれば、何かの犯罪を構成しますぜ」

刑事部長は半ば戯談のように、明智の勝手な振舞を責めた。

「イヤ、その説明は、今に詳しく申上げますが、決してお叱りは受けないだろうと信じています。犯人が魔法使みたいな恐ろしい奴ですから、こちらも少し変則な手段をとらなければならなかったのです」