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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

「ところで、この死体は雪子さんに違いないと思いますが、尚念のために川手氏にここへ来て貰ってはどうでしょうか。僕が電話をかけましょう。それから、僕としては直様検死の手続きをしなければなりません。それも一緒に電話をかけましょう」

中村警部はそう云って、係員に電話の所在を訊ねた。

「それと、もう一つ大切なことがあります。この死体を出品した人形製作者を取調べることです。事務所の帳簿を調べて、すぐそこへ人をやるのですね」

博士が注意すると、警部は肯いて、

「如何にもそうでした。よろしい。電話の序に刑事を呼んで、すぐ調査に着手させましょう」

と云い捨て、そそくさと階下の電話室へ降りて行った。

科学陳列館は、直ちに一般観衆の入場を禁止して、現場保存に力め、博士と捜査係長と数名の係員とが、ボソボソと小声に囁き交しながら待つうちに、やがて、真青になった川手氏が自家用車を飛ばして駈けつけたのを先頭に、警視庁捜査課、鑑識課の人々、裁判所の一行、所轄警察署の人々と次々に来着し、それにつづいて、耳の早い新聞記者の一団が、陳列館の玄関に押しかけるという騒ぎとなった。

川手氏は、死体を一目見ると、目をしばたたきながら、雪子さんに相違ないことを証言した。