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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
玄関前の広場を、モーニングや羽織袴の人々が右往左往する中に、宗像博士と小池助手の姿が見えた。雪子さんの保護を依頼されながらこのような結果となったお詫び心に、二人は親戚旧知に混って、火葬場まで見送りをするつもりなのだ。
小池助手はその後、例のアトランチスの奇怪な客の捜索をつづけていたが、今日までのところ、まだその行方をつきとめることは出来ないのだ。
宗像博士は、集っている人々に知合いもなく、手持不沙汰なままに、金ピカ葬儀車のすぐうしろに佇んで、見るともなくその観音開きの扉を眺めていたが、やがて、何を見つけたのか、博士の顔が俄かに緊張の色をたたえ、葬儀車の扉に顔を着けんばかりに接近して、その黒塗りの表面を凝視し始めた。
「小池君、この漆の表面にハッキリ一つの指紋が現われているんだよ。見たまえ、これだ。君はどう思うね」
博士が囁くと、小池助手は、指さされた箇所をまじまじと見ていたが、見る見るその顔色が変って行った。
「先生、なんだかあれらしいじゃありませんか。渦巻きが三つあるようですぜ」
「僕にもそう見えるんだ。一つ調べて見よう」
博士はモーニングの内ポケットから、常に身辺を離さぬ探偵七つ道具の革サックを取出し、その中の小型拡大鏡を開いて、扉の表面に当てた。