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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
たった一つのドアの外には、こうして僕が頑張っていますし、窓の外には、小池君が見張りをしている。しかも窓は全部内側から掛金がかけてあるのです。このドアもそのうち僕が鍵をかけてしまう積りですよ」
「併し、若し隠れた通路があるとすれば……」
川手氏の猜疑は果てしがないのである。
「イヤ、そんなものはありやしません。さい前僕と小池君とで、お嬢さんの部屋を隅から隅まで調べましたが、壁にも天井にも床板にも、少しの異状もなかったのです。ここはあなたのお建てになった家じゃありませんか。抜穴なんかあってたまるものですか」
「アア、それも調べて下すったのですか。流石に抜目がありませんね。イヤ、あなたのお話を聞いて、いくらか気分が落ちつきましたよ。しかし、わたしは、今夜だけはどうしても娘の傍を離れる気になれません。この部屋の長椅子で夜を明かす積りです」
「それはいいお考えです。そうなされば、お嬢さんには三重の守りがつく訳ですからね。あなたがこの部屋の中にいて下されば、僕達も一層心丈夫ですよ」
そこで川手氏は、そのまま妙子さんの部屋に入って、寝室につづく控えの間の長椅子に腰をおろし、暫くの間は、ドアを開いたままにして博士と話し合っていたが、この際会話のはずむ筈もなく、やがて、川手氏は長椅子の上に横になったまま黙りこんでしまったので、博士