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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

「エ、いつお買入れでした」

博士は駄々ッ子のように繰返す。

「つい最近ですよ。以前に使っていたのが、急にいたんだものですから、四日程前に、家具屋にあり合せのものを据えつけさせたのです」

「ウン、そうでしょう。で、それを持込んで来た人夫をごらんでしたかね。たしかにその家具屋の店のものでしたか」

「サア、そいつは……。わしは丁度居合せて、据えつける場所を指図したのですが、何でも左の目にガーゼの眼帯を当てた髭面の男が、しきりと何か云っていたようです。無論見知らぬ男ですよ」

アア、左の目にガーゼを当てた男。読者は何か思い当る所がないだろうか。我々はどこかで、同じような人物に出会ったことがあるのだ。嘗て雪子さんの死体を入れた陳列箱を、衛生展覧会へ持込んだ人夫の頭が、丁度それと同じ風体の男ではなかったか。

「オオ、やっぱりそうだったか」

博士は唸るように云うと、ベッドから降りて、今度はその下の僅かの隙間に這い込むと、自動車の修繕でもするように、仰向きになって、ベッドの裏側を調べていたが、突然、恐ろしい声で呶鳴り出した。

「御主人、僕の想像した通りです。ごらんなさい。ここをごらんなさい。