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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
立上る骸骨
「で、お爺さんは中へ入って見ないんですか」
小池助手がからかい顔に訊ねると、老人は顔の前で手を振って見せた。
「御免、御免、五貫も出して胸の悪い思いをするこたあねえからね。何なら、お前さん方御見物なすっちゃどうだね」
すると、宗像博士は何を思ったのか、その言葉を引きとるように、
「どうだ、小池君、一つ入って見ようじゃないか」
と、笑いもしないで云うのである。
「エ、先生お入りになるんですか」
犯人の捜索はどこへ行ったのだ。それを捨てて置いて、子供みたいにお化けの見世物を見たがるなんて、先生はどうかしたんじゃないかしら。小池助手はあっけに取られて、博士の顔をまじまじと見つめた。
「少し思いついたことがあるんだよ。……マア、黙ってついて来たまえ」
博士はそう云ったかと思うと、群衆を押し分けて、もう木戸口の方へ歩き出していた。
立上る骸骨
小池助手は、名探偵とも云われる人の、余りの子供らしさに、呆気にとられたが、ふと気がつくと、それには何か訳がありそうであった。博士は非常に実際的な規則正しい性格で、意味もなく見世物なんかへ入る人ではなかった。
「若しかすると、先生はこの化物屋敷の中で、妙子さんを探そうというのではないかしら」