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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

二人は這うようにして、その生々しい生人形の側へ近づいて行った。

「どうもそうらしいね」

「エエ、この顔は妙子さんにそっくりです」

小池助手の鼻の先に、ふっくらとした美女の肩がもり上っていた。彼はオズオズとその青ざめた肌に指を当てて見た。

冷い。氷のような冷さが、指の先から心臓まで伝わって来るように感じられた。それを我慢しながら、グッと押して見ると、美女の肩が、靨のように凹んで行った。柔かいのだ。ゴムのように柔かいのだ。

博士は、ハンカチを取り出して、ベットリと美女の胸を染めた黒いものに押し当て、それを目の前に持って来て眺めたり、匂を嗅いだりしていた。ハンカチには黒い液体が滲んでいる。

「君、懐中電燈をつけてごらん」

小池助手はポケットから、小型の懐中電燈を取り出して、スイッチを押し、その光を博士のハンカチに当てた。

今まで青い電燈の下で、黒く見えていたハンカチの汚点が、赤黒い血の色に変った。

博士は無言のまま、ハンカチを助手に渡すと、胸の傷痕を調べた。

「心臓を抉られている。だが……」

博士は出血量が案外少いことを不審に思っているらしく、なお死体の全身を眺め廻していたが、