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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
直衛は微笑して、「この件だけ、ということをお忘れにならないで下さい」
「どうしてだ」
「町奉行などに据置かれてはたまりません」
摂津は口をあき、どなりつけようとしたらしいが、直衛は辞儀をして、すばやくうしろへさがった。
朝倉邸の帰りに、彼は河本家へ寄り、佳奈を呼んで、話があるから「難波」へ来てくれと云い、反対しようとする佳奈には構わず、さっさとそこを出て比野川のほうへ向った。ちょっとおくれて、佳奈が難波へ着いたとき、直衛は菓子をつまみながら茶を啜っていた。
「まず用件を片づけよう」佳奈が坐るなり彼は云った、「佳奈の持参金は幾らくらいだ」
坐って、いま褄先を直していた佳奈は、そのまま手を止めて、不審そうに彼を見あげた。
「なんと仰しゃいました」
「さあさあ」と直衛はせきたて、「気取ることはない、幾らだ」
「そういう物を持ってゆかなければならないのですか」
「一般のしきたりじゃないか、多少にかかわらず女が嫁にゆくときには金を持ってゆくんだろう」
佳奈は表情をひきしめた、「あなたはそれを当てにしていらしったんですか」
「当てにしていたわけじゃないが、当てにしなければならなくなったんだ」