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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
「お言葉を返すようですが」と喜四郎は云い返した、「なるほど商人は利によって生業を立てる者です、けれどもそればかりでもしょうばいは成り立ちません。土台になるのは信用というもので、いま現銀がなくとも、相手を信用すれば掛け売りも致すのがしょうばいの通例でございます」
「そうか」と云って直衛は頷き、膝の上で扇子をなんの意味もなく動かした、「――すると、矢堂玄蕃には信用して貸したのだな」
「仰せのとおりでございました」
「ではどうして彼を訴え出たのだ」
喜四郎はすぐには答えなかった。
「矢堂を信用して貸したのなら」と直衛は繰り返した、「なぜ彼を奉行に訴えたのだ」
「信用というものは無限ではなく、必ず限度がございます」
「人を信ずるということに限度はない、と奉行は考えるが、そのほうは商人、ここまでは信用するが、ここから先は信用しないという限度がある、そういうことだな」
「さようお考え願って差支えございません」
「その限度をきめるのを目安と云おう、矢堂に百八十両余まで貸した目安はなんだ」
「信用にも限度があると申上げましたことで御了察を願います」
「奉行はそのほうの目安をきいているのだ」