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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

「さて」とやがて直衛は盃を置いた、「――裁きをつけるかな」

そして立ちあがった。

客間へゆくと、昏れかかった片明りの中で、矢堂玄蕃がしんと坐っていた。出してある茶にも手は付けないようで、袴の上に両手を置き、折れるほど首をうなだれていた。直衛は折目ただしく坐り、待たせて済まなかった、と云った。矢堂は俯向いたままで、柳田家へのお預けが解けて帰宅したこと、すべては直衛の裁決によるもので、礼の云いようのないことなどを、聞き取りにくいほど低い声で云った。

「あなたの裁きをうかがいながら、私がどのように思ったかは申しますまい」と矢堂は続けた、「ただ、――明寿の刀に一点のくもりもきずもないと云われたとき、自分が裸にされたように感じました、身の皮を剥がれたような気持でした」

直衛はなにも云わず、矢堂のほうに眼も向けなかった。

「いまになってかようなことを申すのは、みれん極まるはなしですが」と矢堂は自分の膝をみつめながら云った、「――これをしおに、侍らしい人間になってみたい、新しくやり直してみたいと思うのですが、御助力が願えるでしょうか」

直衛は暗くなってゆく庭のほうを見たまま、かなり長いあいだ口をつぐんでいた。