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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「保君、君じゃないのかい。君は自分でつくったおとし穴へ落ちたんじゃないの」
「ウウン、僕じゃないよ。僕一人で、こんな深い穴なんか掘れやしないよ」
「じゃ誰だろう。哲雄君も知らないんだね。おかしいなあ」
一郎君は腕ぐみをして、おびえたような目で、二人の顔を見くらべました。
「この島には、僕たちのほかに、人間がいるのかも知れないぜ。その人間が動物をいけどりにするために、つくっておいたおとし穴にちがいないよ」
哲雄君がささやくような声でいいました。
「だって変だなあ、人間がいれば、海岸の方へも出て来るはずだし、それに火を焚くこともあるだろうから、その煙が見えないわけはないよ」
「そりゃ、そうだけれど……」
哲雄君はいいさして、ふとだまりこんでしまいました。目を大きく開いてじっと一つところを見つめているのです。三メートルほどむこうに立っている、大きな木の幹を、穴のあくほど見つめているのです。
「オヤ、どうしたの? 何をそんなに見ているの?」
「あれをごらん。あの木の幹に何だか妙なものが……」
哲雄君は、まるで化けものにでも出あったような、おびえた顔をして、その幹を指さしているのです。