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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
しかし、やがて、流がいくらかゆるくなり、水の音も、はじめほどやかましくないようになりました。きっと洞穴がひろくなったからなのでしょう。
「みんな大丈夫かい? けがはしなかったかい?」
一郎君の声が暗闇からひびきました。
「ウン、大丈夫だよ。君は?」
保君と哲雄君が、声をそろえて聞きかえしました。
「僕も大丈夫だ。みんな、しっかりしているんだよ。まだ運のつきとはきまっていないんだからね」
一郎君は二人を元気づけるように、しっかりした声でいいました。
「眼鏡猿も鸚鵡も無事だよ。僕がさっきから、しっかり抱いているんだ。こいつたち、声も出ないほどびっくりして、ブルブルふるえているよ」
さすがに動物ずきの保君です。こんな場合にも、かわいそうな家族のことを忘れなかったのです。
「櫂は? 櫂は流しやしない?」
哲雄君の声です。
「ア、櫂がない。流れちゃったよ。君の方は?」
「僕も流しちゃった。櫂があれば、岩にぶつからないように、用心が出来るんだけどなあ」
哲雄君の残念そうな声がしたまま、しばらくの間、誰の声も聞えませんでした。ただ真暗闇の中に、ゴーゴーと水の流れる音が聞えているばかりです。