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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「だって、変だなあ。いくら広いったって、僕たちはもう七八時間も漕ぎつづけたんだぜ。どっちかの岩の壁につきあたりそうなものじゃないか。壁の方で逃げて行くとしか思えないよ」
「いやだなあ、そんなこと言っちゃあ。僕こわいよ。まるで、その辺に魔物でもいるようなこと言うんだもの」
保君のべそをかいたような声です。
ほんとうに、この暗闇には、何か地の底の魔物というようなものがいて、少年たちをいじめているのではないでしょうか。それを考えると、三人はゾーッとして、思わずだまりこんでしまいました。
「ア、誰だい。びっくりするじゃないか」
一郎君がとんきょうな声を立てました。
「僕だよ。僕こわいんだよ」
保君が、たまらなくなって、手さぐりで一郎君にしがみついたのです。
「僕なんだか気違にでもなりそうだよ。ね、君たち、僕を抱いとくれよ。ね、早く」
いつも無邪気でほがらかな保君ですが、それだけに、こういう時には、誰よりも先にこわがるのです。すこしも隠しだてをしないのです。
それをきっかけに、三人は漕ぐのもやめて、筏のまんなかに、ひとかたまりになって、おたがいの体を抱きあうようにして、じっとしていました。