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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
じっと両側の岩を見ていますと、進むにしたがって、その幅が少しずつ広くなって行くような気がします。
「アア、もう大丈夫だよ。この谷底をぬけてしまえば、きっと平地に出るんだ。ごらん、空の星がだんだんふえて来るじゃないか。それだけ谷間が広くなって行くんだよ」
「ほんとだ。夜があける頃には、どっかの岸へあがれるかもしれないね。よかったねえ。僕はもう、ほんとうに死ぬんだと思ったよ。助った、助った、神様にお礼を言わなくっちゃ」
保君はそう言って、妙なふしをつけて、お祈のような文句を長々とつぶやいていましたが、それがおわると、びっくりするような声をはりあげました。
「アー、おなかがへった。早く何かたべなくっちゃ」
それを聞くと、ほかの二人も、にわかに空腹を感じました。今までは無我夢中で、腹のへったことなど、考えているひまもなかったのですが、もう助かったと安心したせいか、むやみに何かたべたくなって来たのです。
そこで、三人は、まだ筏の上に残っていた食料品を手さぐりで拾いあつめて、闇の中の食事をはじめました。あぶった鳥の肉、パンの木の実、あまい果物など、何をたべても、頬がちぎれるほど、おいしいのです。