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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
それから一時間もしますと、空は、はじめの十倍ほどの広さになっていましたが、その空がほのぼのと白みはじめたのです。すがすがしい青空が、だんだんあかるくなるにしたがって、星の光がうすれ、やがて、それが全く見えなくなってしまったころには、空はまぶしいくらいになって、両側の高い岩山も、まざまざと姿をあらわしました。
少年たちはこんな美しい朝を見たのは、生まれてからはじめてのような気がしました。ほんとうに生きかえったような気持です。太陽のありがたさが、この時ほどしみじみと感じられたことはありませんでした。
「ア、青い木が見える。ホラ、あすこをごらん」
目早い保君の指さす方角を見ますと、岩山の間から、はるか向こうに、青々としげった林がのぞいています。谷底はそこでおわって、川は平地に流れ出ているのです。その川の岸に立ちならぶ熱帯樹の林が、緑色に照りはえているのです。
「ワー、平地だ! 上陸地点が見つかったぞ。バンザーイ、バンザーイ」
保君がおどりあがって叫びますと、二人もそれにつれて、高らかに万歳をとなえるのでした。
漕ぐせわもなく、筏は流のまにまに、だんだん広くなって行く谷間を、静かに下って行きます。