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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

それにしたがって、向岸の帯のような緑の林が、一メートル、二メートルと右左にひろがって、こちらに近よって来るのです。その景色の美しさ、楽しさは、何にたとえるものもありません。

それから一時間ほどのち、少年たちの筏は、とうとう岩山をはなれて、平地の川に流れ出ました。非常に広い川です。川というよりも大きな池といった方がいいかも知れません。すこしの波もなく静まりかえった水、そのまわりを、ぐるっと緑の林がとりまいているのです。

谷間を出はなれると、たちまち流がゆるくなって、筏が進まなくなりましたので、少年たちは又、板の櫂で水をかかなければなりませんでした。

「アア、熱くなった。もうこんなものいらないや」

保君が第一に、体にまきつけていた布を、ぬぎすてました。ほかの二人も、それにならったことはいうまでもありません。そして、シャツと半ズボンの軽快な姿になって、せっせと筏を漕ぐのです。

筏は、油を流したようにゆるやかな水の上を、スーッスーッと進んで行きます。

キラキラとかがやく空、青くよどんだ水、濃い緑の林、絵にかいたような景色です。

ところが、筏が池のなかほどにきた時、突然、実に突然、その静けさの中に、ギョッとするようなことが起りました。