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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
と、新三郎の首筋に大きな手がかかって、その体は宙に浮きあがった。豪胆な薪三郎は腰の刀を抜いて空払に払いあげた。新三郎の体は田の中へ落ちた。
新三郎は田の中で起ちあがった。夜が明けかけて星の疎(まばら)になった空が眼についた。彼は刀を拾って田の畔へあがり小さな路へ出た。
一挺の駕籠がむこうの方から来た。新三郎はこんな容(さま)を人に見られてはと思ったが、一条路で他に避ける処もないので、田の中へ隻足(かたあし)を入れるようにして、駕籠をやり過ごそうとした。駕寵の垂は巻いてあった。駕籠の中には吉良左京之進の姿があった。
「五月氏か、御健勝で」
新三郎はその声を耳にすると共に、ばったり倒れて死んでしまった。
八人御先の噂は日に日に昂まって来た。その噂は元親の耳にも入った。元親は嘲笑った。
「臆病者共が何を云う、そんなばか気たことがあってたまるものか」
恐ろしい火の玉は城の中にも飛びだした。その火の玉に当って発狂する者もあった、病気になる者もあった。元親の傍にいた若侍の一人も、その火の玉に往き逢って病気になり、とうとう死んでしまった。元親もそれには驚いて、城下の寺へ云いつけて祈祷をさした。