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ぎじんのすがた

日本の怪談

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页

青空文庫

それでも役目の手前如何ともすることができない。

「では何分御沙汰があるまで、謹慎しておらるるがよかろう、が御沙汰を受けるとなると、重い罪科でござるから、一命はもとより無いものと思わねばならんが、もともと其処許は、他国におられて、六之丞殿と同腹でないと云うことが判っておるから、藩の方でも、そのままに差置かれた、……まあ、兎も角、家へ帰って御沙汰を待っておるがよかろう」

横山はそれとなしに吉平へ謎をかけた。その謎は吉平にも判らないことはなかったが、彼はそれを潔としない程気を負うた武士気質の男であった。

「御親切なお詞に対して、何ともお礼の申しあげようもございませんが、兄が御成敗になった以上、男として生ながらえておるわけにはまいりません、何とぞ如何ようにも御成敗くださるように、おとりはからいをねがいます」

「立派なお覚悟でござる、然らば武士の面目の立つように、おとりはからいいたそう」

「それでは家へ帰って、何分の御沙汰を待ちましょうか」

吉平はこう云って横山の玄関を出て往った。横山はその後姿を見送った。

横山のとりあつかいによって吉平は成敗を受けずに切腹と云うことになった。