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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

奥の間では布団を高く畳んだのにもたれかかっていた母親がわずかに薄目を開いた。そのそばに顔は見えぬが小さい寝床が並んでいる。二人はまたぬき足で近づき、しゃがみこんでのぞいた。赤ん坊は着ている紅木綿の着物と同じような顔色をして眠っていた。始めて妹をもったクニ子は小さい姉のアグリに向って小声で、「ねねこはクニが負うんど、クニ一人が負うんど」と今日から自分のおかれた姉としての権利をでも主張するかのようにいった。いねの蒼白の顔に笑いが浮んでいた。

そのころ、もう船乗りになっていた重吉は讃岐の志度という所へ行って留守であった。海が荒れているので六日の名つけまでには帰れるかどうか分らない。いねは子供たちに向って皆で好きな名をつけてくれといった。そういわれる前から子供たちは名つけの評定でやかましかった。高等科へ行っている高子は自分の読んでいる小説の中に桂子という優しい心の少女があるからそれにしてくれと熱心に姉たちに頼んだ。カヤノはカヤノで、信子というのが好きだと主張する。八重は実枝というのがよいといい、ジツエではない、ミエだと説明した。クニ子が生れた時にも、九人目だからクニ子にせよといってそれが通った祖母は、