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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

三

「今度は小んまい子じゃせにコマエとでもつけいや」

といったが娘たちが承知しない。審判のミチの提議で結局それぞれの名は神棚に上げられ、あらためてくじを引くと実枝と出たのであった。誰も異議を唱えるものはなかった。

赤坊の実枝はこうして世に出、小さいなりに達者であった。ミチもカヤノもそれぞれまた船に乗って広島や大阪へ帰っていった。百日の宮詣りが近づいていた。いねは姉たちの着古した赤い布をあれこれと見積っていたが、姑のかやに向って、

「孫のような子をつれて宮詣りでもあるまい、やめとこか」

するとかやはもってのほかという顔つきで首をふり、

「何をいうぞいの、罰当りな。鶏でさえも卵生んだら、ここここと鳴くのに」

いねはつぎはぎをして実枝の宮詣りの赤い着物を縫った。

三

暦を遠い昔にさかのぼらせると、永い間母一人子一人の暮しを立てていた樽屋の重吉に、河内源氏の流れを汲むといわれている河内屋の一人娘であるいねが嫁入ったのが明治二十年のことであった。つり合わぬこの縁組に人々は目を見はり、やがておいねさんはふずくり嫁だという噂がもっぱら立てられた。ふずくりは不作りという意味ではなく、押しつけというような意味である。